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『笛吹き』 1

カカシ × ナルト


   シリアス。
   里抜けのお話です。


   タイトルは、谷山浩子さんの歌から。
   『僕は鳥じゃない』というアルバムに収録。






     ~  夜毎の夢に 現れ   僕を呼ぶよ 笛吹き

        おいで今すぐ 私と   地平線の 彼方へ 

        此処には もう   何もない ・・・  ~





里の人間に痛めつけられるのは、今に始まった事ではない。

そういう時、ナルトはいつも無抵抗だった。
嵐のような時間が過ぎるのを、ただ黙ってやり過ごす。

自分が下忍になった事で、余計酷くなった気がする暴力は、
いつか過去の仕返しをされるのではないかとの恐怖心から。

ナルトは、そう考えていた。


忍としての力をこれ以上得る前に、何とかしたかったのだろう。
普段人気のない場所は避けるよう、気をつけていたにも関わらず、
その日うっかり森の外れで、里の人間に捕まってしまった。

運の悪いことは重なるようで、その中に自分と同じ忍も混じっているらしい。
するりと逃げ出せないような、そんな気配を察知する。

ナルトはいつものように、ただ時間が流れるのを待つ。
だが、その日の暴行は、いつになく酷いものだった。

もういい加減ヤバイかも・・・と感じ、無意識に相手の手を払ってしまうほどに。


それは些細な力だったと思う。
ただ当たり所が悪く、相手の腕に、一筋の血が流れてしまっただけ。


それなのに・・・。 ナルトからの反撃を予想していなかった人間達は、
大袈裟なまでに『九尾にやられた』と騒ぎ立て、その場から姿を消していった。

自分達が、相手に対して、それ以上のダメージを与えた事など忘れたかのように・・・。


明日、どんな騒ぎになっているのか、考えただけでうんざりしてしまう。
その頃までには、自分が受けた傷も消えてしまっているだろう。 相手の思う壺だ。

ナルトは大きく溜息をつくと、その場にひっくり返ったまま、空を見上げていた。


さわさわと風に揺れる草木の葉擦れが耳に優しく、慰めてくれているようだった。

植物達はいつも優しい。


三代目火影の元へ、早く謝りに行かなくてはならない。
そう思いながらも、なかなか身を起こすことが出来なかった。

全てが面倒くさくなっていた。

いつまでたっても変わろうとしない、大人達。
認めてもらおうと頑張っても、それすらが気に入らないらしい。
頑ななまでに、「九尾」としてしか、見ようとしてくれない。

一体いつになったら、
「うずまきナルト」というただの忍、と認識してくれるのだろう。


こんな時だ。 何処かへ立ち去りたくなってしまうのは・・・。


昔から時々、聞こえていた。 何処かで自分を呼ぶ声。
葉擦れのように耳に優しく。 近くから遠くから。
一緒に行こう・・・と甘く誘う、囁きのような音。


その誘惑は、最近とみに、大きくなってきた気がする。

こうやってぼんやりしている時や、
夜眠ろうとして意識がゆるく離れかけている時など、
すぐ近くで聞こえる気がするのだった・・・。



「こんな所で寝てると、風邪引くぞ?」

急に耳元で聞こえた声は、よく知った気配の持ち主。
いつも急に出現して、ナルトを慌てさせる人物だった。

「カ、カカシ先生っっ!!こんな所で、どうしたんだってばよ?」

「それはこっちのセリフでしョ。・・・こんなに傷つけられちゃって。」
「これくらいどうって事ないって!俺、すぐ直っちゃうし。」

カカシに心配かけたくなくて無理に笑ってみせれば、
隻眼に痛ましそうな色が浮かぶ。

「・・・それに今日は・・・。俺ってばドジっちゃったんだ。」 
「んー?」  「相手の人の手に、怪我させちゃった。」
そう言って、自分が痛そうに顔を歪める。


     ***     ***     ***


こんな優しい子に、里のヤツラは、いつまで理不尽な暴力を与え続けるというのだ。

カカシは、心の中の苛立ちが収まらない。
自分が傷付けられてなお、相手を心配するナルト。
そんな傷、些細なものに違いないのに。


理不尽な痛みに押し曲げられる事無く、真直ぐに育ってくれた。
陽だまりのような笑顔を忘れずにいてくれた・・・愛おしい子。


暗部に所属していた時代、カカシはナルトを影ながら見守っていた。

酷い目に遭いながら、それでも笑う事を忘れなかった彼の存在に、
いつの間にか自分の方が救われていた。

父親に良く似ているようで、彼の人より強い輝きを持つ子ども。
感情なんてとうに忘れたと思っていた自分が、暖かい気持ちを思い出していた。


それだけでなく。
何処かで、自分の命など、もうどうでもいいと思っていたのに、
生きてこの子の元へ戻るという強い欲求さえ、生じさせていた。

・・・この子がいたから、生きてこられたのだ・・・。



ナルトの傍へ姿を現すことが出来たのは、
彼の担当上忍となった最近の事。

これでやっと、大っぴらに彼を守れると思ったのに。
彼の存在を当たり前のように傍で感じるようになって。
むしろ自分の方が、救われている。


上忍として酷い任務が続き、感情の凍りつきそうな時など、
彼の温もりを感じると、それが自分にも沁みてくるのが解る。

彼に会うだけで、張り詰めたものをゆるりと融かされていくのが解る。

近くでその笑顔を向けられると、血塗られた自分も許される気がしてくるのだ。


それなのに・・・何故、彼だけがいつまで経ってもこんな目に遭うというのか。


まだ横に寝転がったままのナルトを、ふと見やる。

ぼんやりと空を眺めている表情は、変わりないけれど。
蒼穹の瞳には、雲がかかっているように見えた。

この瞳を翳らせるものは、何があっても許せそうにない。



「ねぇ・・・ナルト?お前はこの里が好き?」

そっと柔らかな金糸に手を伸ばし、
ゆっくりと撫でながら、直球で聞いてみる。

「・・・う、ん。俺ってば、いつか火影になる男だからなっ!」

顔だけカカシの方へ向け、咄嗟に言葉を詰まらせながらも、
言い慣れた夢を口にする子ども。

どんな表情を浮かべているか、自分では気が付いていないのだろう。



・・・いつものように、希望と決意を持って宣言するのとは違い。
虚ろな瞳をしたまま、反射だけで、機械的に答えているように見えた・・・。




                      ~  NEXT  ~
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2009年07月01日 | 『笛吹き』 | こめんと 0件 | とっぷ

こめんと

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