『天使の呪か悪魔の祝』-5

カカシ × ナルト 。


   笑い流して欲しい話。


   現状を知ることになるカカシとサクラ。
   密かに怒っている綱手とイルカ。








覚悟を決めて、火影室の扉を開いたカカシの元へ飛んできたのは、
愛しい子の制止の声と、綱手の拳だった。

「!!!」

先ほど自分が立ち止まった場所は、見事に抉れている。
何故自分が狙われたのか解らないながらも、綱手の本気は理解できた。

「咄嗟に避けるとは、さすが里でも№1を争う忍だけの事はあるな。」
危険なモノをはらむ表情と共に発せられた声もまた、似たような色を含んだものだった。

「ありがとうございます。しかし、こんな方法で試されたら危険じゃないですか。」
「ふん。そんな面倒なこと、今更するわけないだろ。」
「じゃあ、何です?あれが当たったら、いくら俺でも無事じゃ済まないと思いますがねぇ?」
「そうだろうね。それが目的なんだから。」

言うが早いか再び拳を繰り出そうとする綱手に、カカシが身構えると、
ありがたい事に、今度はサクラの制止の声が入った。

「落ち着いてください、綱手様!!このままじゃ部屋が崩壊してしまいます。
やるなら外でお願いします。ってか、その前に一体何があったか説明してくださいっ!?」
「・・・サクラ・・・その言い草は、ちょっとツメタイんじゃないー?・・・」
「カカシ先生は、黙ってて!!」  「・・・ハイ。」

教え子の逞しい成長ぶりが、ほんの少しせつないカカシである。
思わぬ迫力に負け、がっくり肩を落とした所へ心配そうな声がかけられた。

「カカシ先生、大丈夫だってばよ?」  
「大っ丈ー夫。 久しぶりだね、ナルト。 逢いたかったよー。」

どういう理由でか未だ『お色気の術』は解けていないようだが、久しぶりの再会に、
一瞬、今の状況もここがどこかも忘れかけ、愛し子を抱き取ろうと腕を広げてしまう。

次の瞬間、飛んできたのは、イルカのクナイである。
それは、綱手の拳より簡単に避けられる程度のものだが、
温和な彼が自分に武器を投げつけてくるとは想定外の出来事だった。

「・・・イルカ先生、どういうつもりです?事と次第によっては容赦しませんよ・・・?」
「カカシさんこそ、ナルトから離れてください。」
「よく止めた、イルカ。どれ、私も加勢するとしようかね。」
「綱手様、まずは説明してくださいってば!」

綱手の腕に縋りつき、何とかその攻撃を押さえているサクラをよそに、
二人の間には一瞬、本気の殺気が走る。
両者がそれぞれの武器を手にしようとした次の瞬間、ナルトが叫んでいた。


「もう、二人とも止めてくれってばぁーっ!!
カカシ先生が死んだら、お腹の子になんて説明すればいいんだよっ!!」


「「はっっ? 子ども!?」」

思いがけない言葉を耳にして、サクラとカカシの声が重なった。

「イルカ先生も綱手のばーちゃんも、少し話を聞いてくれってば。」
ナルトの必死の懇願に、とりあえず、イルカと綱手も黙って受け入れる事にする。 

一瞬の沈黙の後、恐る恐る、サクラが口を開く。

「ナルト、アンタ今、『お腹に子どもが』って、言った?」
「言ったてばよ。綱手のばーちゃんの診断じゃ、もうすぐ2ヶ月だって。」
「何、冷静に言ってんのよ!有り得ないことでしょう、それは。」
「『変化の術』が出来てもそこまでは無理なはず、って言われた。」
「なのにどうしてそんなに落ち着いてるのよ、アンタは!!」
「だって、綱手のばーちゃんが、嘘つくわけねぇーじゃん。」
「それでも、もうちょっとあるんじゃないの。何か、こう、葛藤とか・・・」
「んー?俺ってばずっとこの格好から戻れないまんまだったしなー。」


サクラの指摘はもっともであった。 だが、何より頭を使うことが苦手なナルトである。
その仕組みを考えても解らないのなら、その事実を受け入れてしまった方が早い。

あまりにあっさりとしているナルトの様子に、サクラの方が頭を抱える。

「・・・それで。アンタ、カカシ先生が父親、って言ったわよね・・・?」
「うん。だって、カカシ先生としか、やってないもん。」
「花も恥らう乙女の前で、なに直截的なこと言ってんのよっっ!」
あんまりな告白にサクラの頬に朱が走り、ナルトの頭には拳骨が飛んだ。

「いてっっ。サクラちゃん、痛いってばよぅ~~。」
「お黙りっ!で、カカシ先生・・・否定はしないんですね?」

らしくもなく呆然と事態を眺めていたカカシは、サクラの呼びかけで我に返る。

「あ、ああ。間違いない。ナルトの相手は俺だ。」
隠すつもりもないので、あっさりうなずく。
この際、皆に、ナルトは自分のものだと主張したいくらいだった。

「・・・カカシ先生・・・、アンタって人はぁーっっ!!!」
叫ぶとともに、サクラの鉄拳がカカシの鳩尾めがけて放たれていた。
思いがけない現実を知らされうっかり気を抜いていたカカシは、避けきれない。

それは、綱手に及ばないまでも、かなりの威力を誇る技であった。





火影室には、綱手とナルトとカカシ。

カカシが今も五体満足でいられるのは、ナルトによる必死の執り成しがあったからだろう。
それがなければ、子どもの命と引き換えに、この世を去る羽目になっていたかもしれない。
現在、人数が少ない方が冷静に話し合えるということで、イルカとサクラは退室している。
綱手は、一つ、溜息をつくと、口火を切った。

「・・・それで、お前らいつから付き合ってたんだい?」
「はぁ・・・、最近の事ですが・・・。」
「本当にナルトの意思で、なのかい?」

ひたりとカカシに視線を当てて問う口調は、どこまでも真剣だ。
綱手にしてみれば、可愛いナルトがよりにもよってこの男と
付き合っていること自体、許せないものがあるのだろう。
そういう面には鈍いナルトはともかく、カカシは痛いほどよく解っていた。

「もちろんだってばよ!」
一瞬、言葉に詰まったカカシに代わって、ナルトが迷いなく答える。

「俺、ちゃんとカカシ先生の事、好きなんだ。」
「・・・ナルト。」

にこりと笑うその顔は女性のラインを描いていたが、確かにナルトで。
カカシの心を暖かいモノが満たす。
この存在だけが、どこか醒めた自分を暖めてくれることが出来た。
ここはなんとしても、綱手に二人の関係を認めてもらわねばならない。
カカシは、改めて、綱手と向き合う。

「俺も、遊びじゃないって、誓います。」
「それが信じられれば、苦労はないんだがな。」
「俺の何がそんなに信じられないんですか?」
「お前、『お色気の術』の最中のナルトに手ぇ出しただろ?
聞けば、付き合い始めたのは最近の事だって言うじゃないか。
倦怠期の夫婦でもあるまいに、そんな時に女体化を求めるってのは、なぁ?」

「それは、俺からカカシ先生への『誕生日プレゼント』だってばよ!」

事実は事実であるため、咄嗟に返す言葉を見つけられないカカシに代わって、
誤解を解こうと、勢いよくナルトが答えた。

「・・・お前は一体、何考えてんだい?」
その答えは、綱手にとっても予想外なもので。
再び、頭が痛むような気がして、こめかみを押さえる。

「だって俺、カカシ先生に何あげたらいいか解んなかったから。
先生の好きなモノっていえばエロ仙人の書く胡散臭い小説だろ?
だから、エロ仙人に相談すれば、いい答えが解るんじゃないかなーって・・・」
「・・・で、たどり着いた答えがそれだ、と・・・?」
「おう!『お色気の術』で変化して、自分にリボン着けて、そんでぇ~、
『プレゼント』って言えば、カカシ先生なら喜ぶだろ、ってさ。」

それはカカシにとっても、初耳だった。
自分を喜ばせようと必死に考えてくれたナルトの気持ちは嬉しかったが、
自来也の助言に関しては、複雑なものを覚える。
彼の目論見に乗ってしまった自分が悪いとはいえ、ナルトにそんな入れ知恵を
しないでくれていれば、こんな厄介な事にはならなかったのだから。

それは、綱手も同意見だったらしく。
しばらく肩を震わせていたかと思うと、おもむろに拳を振り下ろした。

「っんの、大馬鹿者がぁ~~~っっ!!」

全ての元凶が、自分の昔からの仲間である自来也であると知った
綱手の怒りは、カカシ以上のものがある。
その感情のままに振り下ろされた拳は、机を真っ二つにしていた。


その音に慌てて火影室へ戻ってきたイルカが、叫ぶ。
「火影様!一体何が・・・」

「・・・自来也だ。アイツを探して来るよう指示を出せ。」
「は?自来也様ですか?」
「どんな事をしても、私の前に引き連れて来いっ!
私がじきじきに、地獄へ送ってやろうじゃないか。」

本気の怒りを見せる綱手の剣幕に、ただ立ち尽くすかない一同である。
どさくさに紛れて、おろおろと目を泳がせるナルトの肩を抱き寄せつつ、
カカシは心の中で、そっと自来也の無事を祈っていた。






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2009年10月09日 | 『天使の呪か悪魔の祝』 | こめんと 0件 | とっぷ

こめんと

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