『子狐のハツコイ~狼Side』
SCENE.2 カカシ → ナルト
カカシSIDE。
なんだかちょっと、ヤサグレ中。
波の国の任務から帰って来てからというもの、ナルトとサスケの様子がおかしい。
サスケは、白との戦いにおける無意識の行動で、
自分の気持ちの在処に気が付いたって所か・・・。
はたから見てると、最初から解りやすかったけれど。
感情に気がついたからといって、それ以上の事は考えていないのか、
何を言うでもないし、行動するそぶりもみせないでいる。
ただ、以前よりも、視線がナルトを追うようになっただけ。
それが、カカシを、静かにイライラさせていた。
いっそ解りやすく事を起こしてくれた方が、
牽制するきっかけになってよかったのに。
まだどうしていいか解らないなんてオコサマだな~、と、
カカシは醒めた気分で、心の中で突っ込むしかない。
それよりも、気になるのはナルトの方。
惹かれてやまない、金色の子ども。
人の命を奪うことに慣れてしまった自分には、眩しいくらい真っ直ぐで、
それまで戦っていた相手のために、感情のまま、静かに涙をこぼしていた子。
蒼い瞳から零れるそれが、あまりにも綺麗だったから。
慰めの言葉もかけず、ただずっと、傍で見ていたことを覚えている。
ナルトは、理不尽な理由で痛めつけられることは多々あっても。
自分の命をかけて守ってもらうなんて事は、今までなかっただろうから。
それによってサスケへの気持ちがどう動いたか、気が気ではなかった。
その瞬間、白との間で、サスケとの間で。
どんな会話がなされていたのか、自分は知らない。
我を忘れ、九尾の力を開放しそうになるほどの強い感情。
それを呼び起こすほどの、何があったというのだろう。
確かに、サスケは生きていた。
だが、あの一瞬、彼は確かに死んだのだ。
ナルトの中でも、サスケ自身の意識の中でも。
そのサスケの「想い」は本物だったから。
今となっては、二人の中で深い「絆」となっている。
そこに、自分が割って入ることは出来ない。
サスケが助かって良かった・・・と安堵する気持ちは本当だけど。
いっそ消えてくれていれば・・・との思いが去来するのも、また事実。
どうせ割って入ることが出来ないならば、
存在自体が消えてしまえばいいのに・・・。
大人気ないとは解っていても、
「嫉妬」による理不尽な感情だと解っていても、
そう思うことを止められなかった。
(「命をかけて」なんて、笑っちゃうよな。)
死んでしまったら、意味がないではないか。
それから先、ナルトの傍にいられなくなるのだ。
彼が困っている時、手を差し伸べることも出来ない。
(そもそも、俺だったらそんなヘマしやしないよ。
写輪眼の正統後継者だからといって、アイツは、
まだまだ俺の足元にも及ばないんだぞ?)
(だから、なぁ。
サスケを選んだりするなよ。)
ここ最近のうちに。
よく馴染んでしまった、子どもじみた感情が浮かぶ。
今いるのは、あの子の部屋が見える場所。
愛しい子は、すでに夜更けだというのに、
飽きもせず、窓から月を眺めていたから。
その心には、誰が浮かんでいるのだろう?
キリキリと心臓が痛くなってくるような想い。
こんな感情を、自分は初めて知った。
忘れていた色んな感情を、あの小さい子は自分に教えてくれる。
あの子といると、汚れた自分も、少しは綺麗になれる気がする。
だから手に入れたい。別の人間のものになるなんて、我慢できない。
それくらいならいっそ・・・
*** *** ***
翌日の任務は、森における「失せ物探し」。
何だって大事なモノを、そんな場所で落としたんだか。
そもそも、落とした場所がはっきりいるなら、自分で探せばいいものを。
小さくても里にとって大事な仕事なんだ、と、
いつも三人に言っているというのに、心の中で悪態をつく。
集合時間はとうに過ぎていた。
いつもの事だ。
昨夜、遅くまでナルトを眺めていて。
月を見上げる彼が、なにやら楽しそうに微笑っていたから。
その表情の先にあるものを考えては、
愚にもつかない感情に囚われていた。
そのせいで、朝から気分は最悪である。
だからといって、いつまでも仕事へ行かない訳にもいかない。
今日の言い訳は、
蒼い空が眩し過ぎて道を見失いかけました・・・、にしておくか。
そんな事を考えながら。
知らず、猫背をさらに丸めて。
集合場所へ向かうのだった。
~NEXT~
・・・どうしよう(汗)?
ナルトとテンションが違いすぎます。
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こめんと
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